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昭和58年 477P 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
芭蕉の門人、天野桃隣の流れをくむ人をいう語。代々、太白堂と号した。
はしがき
たしか大正が昭和と改元された頃と思う。当時世田谷は未だ町と呼ばれて居た。代官屋敷の近くに叔父の 親しい渡部忠寿さんという弁護士のお宅で、毎月二十名位の俳句会が催されて居た。微かな記憶ではあるが、 高浜虚子・星野立子・学習院教授の山本牧南・豪徳寺の大木水石・画家の中村竹邨の各氏が参席した様な もする。私も末座に坐って居たが、当時の作品は覚えていない。その句会でのお茶飲み話に、太白堂の噂が 出たり、無風表現等の議論もあり、結局は批判めいた処に落着く、正岡子規の俳係下、人々には 新興俳句の 気負いもあったのであろう。何れの世界に於いても思想あるいは、哲学の相違に依る門流論理の 差異は当然 であるが、桃家に対する彼等の認識の浅さも、否めないと思う。
芭蕉門、天野桃隣を始祖とする、桃家太白堂は時代の紆余曲折を経て、代々相伝えて第十一代の今日に及 んで居る。桃家を斯界有数の宗家に顕彰した、六世江口孤月翁は、一つ橋家の家臣であり、門弟には士分も 多く、俳道の薫陶を受けていた事は、練馬区石神井、東高野山長命寺に、安政六年建立の句碑に刻まれて居 るのを見ても判明する。八世、松平呉仙翁は、松平姓を名乗り徳川家の血緑と思われる。九世日比野桃年翁 は官人であり、今日まで九百号に及ぶ俳誌「桃葉集」の創刊者である。
十世日比野桃月翁は九世の長男で軍籍にあり、日露戦争当時軍隊内に於いては、武が優先され文を卑しむが如き雰囲気の中でも、俳道に励み、俳句に依って士気を高揚したり、部下の教養に只管心を致し、戦場えの軍用行李に、俳句に関する手記を詰めて持ち歩いた。と昭和五十二年読売新聞が記事にしている。
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